始末屋 妖幻堂
 あの後、佐吉の傷のこともあり、しばらく妖幻堂で暮らしていた小菊と佐吉だったが、傷が治ってからは、きちんと身の振り方を考えたようだ。
 小菊と話し合った結果、都の郊外、東に向かう街道沿いで、小さな茶屋でもして暮らすことにしたらしい。

「俺は旦那の客だったな。だったら支払いはしないといけねぇ。始末料は、いくらだい?」

 今後の計画を語った後で、佐吉のほうから切り出してきた。
 ほぅ、と少し眼を細め、千之助は顎を撫でた。

「きちんと払う気だったんかい。ふふ、そのまましれっと踏み倒すのかと思ったぜ」

「馬鹿にするな。義理は通すぜ」

 睨む佐吉を受け流し、千之助は、ちらりと狐姫を見た。
 次いで、佐吉の隣の小菊を見る。

「そうさなぁ、結構高ぇぜ。廓一軒をぶっ壊し、俺ぁ結構な火傷を負った。俺っちだけならともかく、こっちに傷つけたのが高く付くな」

 ちょい、と煙管で狐姫を指す。

「とはいえ、小太からも貰ったからな。まぁ半額・・・・・・てところか。それでも結構な値になるが、お前さん、払えんのかい」

「ガキに払えるモンが、何で俺に払えねぇんだ」

 怪訝な表情で、佐吉が言う。
 普通に考えれば、そう思うだろう。
 小太のような小僧が半額払ったというのなら、微々たるものではないのか。

 千之助は少し口角を上げ、ちちち、と軽く指を振った。
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