始末屋 妖幻堂
「ほれ、そろそろ背の骨が、いかれようぞ」

 男に巻き付き、薄笑いを浮かべる牙呪丸を、破落戸連中は茫然と見つめた。
 まるで大蛇が巻き付いているようだ。

 こういう荒事には慣れているが、どうやら今は、単なる喧嘩では済まないようだ。
 えもいわれぬ不気味さに、さすがの破落戸どもも、慌てて手を振った。

「ま、待て! わかった、わかったから! 兄ちゃんの言うとおりにしようじゃねぇか」

 叫ぶ目の前の分銅男に、牙呪丸はちらりと目を向けた。

「と、とにかく、そいつを放してくれ。ほら、この通りだ」

 忙しなく片手を振りながら、持っていた鎖分銅を、その場に落とす。
 それに従い、他の無事な者らも、それぞれの得物を地に放り出した。

「・・・・・・では答えてもらおうか。お主らが、小太を攫ったのか?」

 少しだけ締め付けを緩め、牙呪丸は当初からの質問を繰り返す。
 少し考えた後、分銅男は小さく頷いた。

「ま、結果的にはそうだが。だが元はといえば、あの小僧が悪いんだぜ。うちの大事な商品を、初めにあいつが攫ったんだからな」

「ただの使いっ走りの小僧に後れを取るとは、花街の亡八というのも、大したことはないのぅ」
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