執着王子と聖なる姫
そこかよ。と、画面を見てふっと笑い声を洩らした愛斗に、聖奈がとうとう突っかかった。

「マナ、他に好きな人ができましたか?」
「は?」
「一緒に歩いてた人、同じ学校の人ですか?」
「おぉ。何?妬いてんの?」
「真面目に話してるんです!」

じっと睨みを利かせたとて、食べかけのサンドイッチ片手ではどうにもこうにも格好がつかないことに、聖奈は気付いていなかった。

「何もねーよ」
「マナ、笑ってましたよ」
「俺だって笑うさ」

拘るところはそこか。と、運ばれて来たアイスコーヒーを受け取り、愛斗は天井を見上げた。

「マナ!」
「お前さ、結婚したらうちの家住む?それとも他に家借りる?」
「今はその話じゃありません!」
「メーシーはうちに住めつってたけど、レイはどうするつもりなんだろな」
「マナ!」

ガタンと立ち上がった聖奈に視線を戻し、愛斗は笑った。

「どうでもいいよ、他の女の話なんか」

その程度のことだと片付けてしまうには事が大き過ぎるのだけれど、それは愛斗の中でのことだ。聖奈にわざわざ言うことでもない。と、トンッと肩を押して椅子に座らせ、愛斗は真っ直ぐに聖奈を見た。


「俺、お前と結婚したいんだけど。嫌なら別れるか?」


あまりに真剣な瞳とストレートな言葉に、聖奈はそれ以上何も言えなくなった。

別れたいはずがない。もうとっくに嫁ぐと決めているのだから。

でも、不安がある。
でも、これ以上追求すれば、愛斗のことだから「じゃ、別れようか」と言い出しかねない。
でも、やっぱり気になる。

「でも、」の繰り返しに悶々とする聖奈に、いつになく爽やかな笑顔で愛斗は言った。

「心配すんな。俺はお前以外とどうこうしようだなんて思ってねーよ」

ハルさん怖いし。と、最後は呑み込んで、ヨシヨシと頭を撫でてやる。

「マナ、セナのこと好きですか?」

不安に揺れる聖奈の瞳を真っ直ぐに見つめながら、愛斗はふっと笑い声を洩らす。

「お前は俺のonly oneだよ」

「好き」だの「愛してる」だのは、ベッドの中さえそう易々とは口にしない。その代わり、「only one」はいつだって与えてやる。それが聖奈が欲しがっていた「一番」なのだから。

「はる…いいって言ってくれますかね?」
「言わせてやるよ。心配すんな」
「そんなこと言って大丈夫ですか?相手ははるですよ?」
「大丈夫だ。俺はメーシーの息子だぞ。うるせーマリーも要るしな」

ニヤリと笑う愛斗に釣られ、聖奈もくすくすと笑い声を洩らした。

「それでもダメだったら、ちーちゃんに何とかしてもらいましょう」
「おぉ!それが一番手っ取り早いかもな」
「皆ちーちゃんには弱いですからね」

やれやれと肩を竦める聖奈を見ながら愛斗は、ほんの少しでも揺れ動いてしまったことを心の中で詫びた。
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