執着王子と聖なる姫
上向きの気分を壊さぬよう一つ深呼吸をし、そっと扉引く。
すると、愛斗が携帯を片手に誰かと会話をしていて。
こっそりと部屋に入り、レベッカは音を立てぬよう扉の鍵をかけた。
ここのアーティストは、基本的に自由出勤ということになっている。外での仕事が多いアーティストや、自宅での仕事が可能なアーティストとは顔を合わせる機会も少ない。
その数少ないアーティストの中でも、このデザイナールームへ遠慮無く足を踏み入れて来るのは、3トップだけだ。
それを阻止するためだけにかける鍵。本当に二人だけの空間が出来上がる。
「じゃあ、それでお願いします。デザインはもう上がってるんで。はい。いや、自分でやります。はい」
会話の内容から、相手は恵介だろうとすぐに予想がついた。聖奈ならばそっとしておこうと思ったレベッカだけれど、相手が恵介ならばそう気を遣う必要は無い。
コツンとヒールの音を響かせたレベッカを振り返り、愛斗はグッと眉根を寄せた。
「Oh!怖いお顔」
クスクスと笑うレベッカを引き寄せ、愛斗は携帯を閉じる。そして、グッと顎を持ち上げて視線を合わせた。
「完全にメーシーの趣味だな」
「メイク?髪?」
「どっちも。お前の趣味じゃない」
褐色の右目に見つめられ、レベッカは動きを止めた。
嫉妬と独占欲と、その他諸々。それが絶妙な濃度で混ざり合った瞳に捕らえられるこの瞬間、レベッカは何とも言い難い快感に浸れる。
愛斗に負けず劣らず、レベッカも立派な変態である。
「落ちなかったよ」
「嘘つけ。落ちてないのにこんなことするかよ」
「マナとは違うと思うよ?」
そう言ったとて愛斗が納得するはずがないことは、レベッカも十分承知している。「読める女」は、何でもお見通しなのだ。
すると、愛斗が携帯を片手に誰かと会話をしていて。
こっそりと部屋に入り、レベッカは音を立てぬよう扉の鍵をかけた。
ここのアーティストは、基本的に自由出勤ということになっている。外での仕事が多いアーティストや、自宅での仕事が可能なアーティストとは顔を合わせる機会も少ない。
その数少ないアーティストの中でも、このデザイナールームへ遠慮無く足を踏み入れて来るのは、3トップだけだ。
それを阻止するためだけにかける鍵。本当に二人だけの空間が出来上がる。
「じゃあ、それでお願いします。デザインはもう上がってるんで。はい。いや、自分でやります。はい」
会話の内容から、相手は恵介だろうとすぐに予想がついた。聖奈ならばそっとしておこうと思ったレベッカだけれど、相手が恵介ならばそう気を遣う必要は無い。
コツンとヒールの音を響かせたレベッカを振り返り、愛斗はグッと眉根を寄せた。
「Oh!怖いお顔」
クスクスと笑うレベッカを引き寄せ、愛斗は携帯を閉じる。そして、グッと顎を持ち上げて視線を合わせた。
「完全にメーシーの趣味だな」
「メイク?髪?」
「どっちも。お前の趣味じゃない」
褐色の右目に見つめられ、レベッカは動きを止めた。
嫉妬と独占欲と、その他諸々。それが絶妙な濃度で混ざり合った瞳に捕らえられるこの瞬間、レベッカは何とも言い難い快感に浸れる。
愛斗に負けず劣らず、レベッカも立派な変態である。
「落ちなかったよ」
「嘘つけ。落ちてないのにこんなことするかよ」
「マナとは違うと思うよ?」
そう言ったとて愛斗が納得するはずがないことは、レベッカも十分承知している。「読める女」は、何でもお見通しなのだ。