執着王子と聖なる姫
「来週、LAに行くって言ってた」
「俺が誘ったんだ。18歳の誕生日に、里帰りのプレゼント」

変わらず薄く口元だけを笑ませるメーシーに、愛斗の苛立ちは募る。

「レベッカ泣かせやがったら、マリーに全部喋るからな」
「脅しかよ。穏やかじゃねーな」
「あっ。アキちゃんがアキちゃんに戻った」

愉しげに声を漏らす志保に嗜めるような視線を向け、メーシーはコホンッと咳払いをした。

「てかさ、レベッカは君の何なわけ?」

口撃されっぱなしはスタイルに合わない。やられたら、倍の威力でやり返す。それがメーシーだ。

腹黒い親子の頭上には、分厚い漆黒の雲。その合間からは、稲光が射す。

「アイツは俺の友達だ」
「いやー、便利な時代になったもんだ。kissしても友達だなんて、麻理子だったら発狂してるね」
「身をもって見せてくれるってか?さすがdady」

ニヤリと口角を上げて携帯を掲げる愛斗に、同じく携帯を掲げたメーシーがふっと笑い声を漏らす。

「君のhoneyはどんな反応するかな?ご機嫌取りの前だろうに」
「残念だな。アイツは既に調教済みだ。俺はあんたとは違う」
「でもあの子、あの晴人の娘だよ?」

怪しげに笑うメーシーの背後に、閃光が走る。受けて立つ愛斗も、口角を吊り上げた。


「甘いな、dady。あれはちーちゃんの娘だよ」


その一言が、勝負の決め手となった。

「勝負あった。そこまで」

愛斗側に手を挙げ、にっこりと微笑む志保。レフェリーに制され、メーシーは大きな舌打ちをしてから新しいタバコを咥えた。
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