執着王子と聖なる姫
「セナ。今日は意地悪しないでお前が望む通りにしてやる」

ズルイ。
それは自分でもわかっている。

けれど、望まれたい。欲しがられたい。
その欲求を叶えてほしい。埋めてほしい。

妹に依存して埋めようとしていた隙間を。溺れるくらいの愛情で埋めてほしい。

「今日は一緒に寝てもいいですか?」
「ああ。一緒に寝よう」
「服着てもいいですか?」

コクリと頷き、足元に脱ぎ捨てられたスリップを頭から被せてやる。

「他はマナの好きにしていいですよ?いっぱい甘えてください」
「俺が甘えんのかよ」
「セナが抱っこしてあげます」

うんと両手を伸ばされ、ふっと頬が緩む。敵わない。コイツには到底敵う気がしない。

「セナ…好き」
「セナもマナが大好きです。マナはセナの一番です。一番愛してます」

勇気を出して押し出した一言を、アッサリとそれ以上の言葉で返された。

もっと言ってほしい。好きだ。と、愛してると。

そう思う俺は、どこまで貪欲なのだろう。

「他は?」
「他には無いですよ。セナはマナがいてくれたらいいです」
「ずっといるとは限らねーけど?」
「いなくなっちゃうんですか?」

ゆらりと瞳が揺れる。けれど泣きはしない。それは知っている。

「俺がいなくなったらどうする?」
「どこに行くんですか?NYに帰るんですか?セナも連れて行ってください。マナと一緒にいたいです」
「だったらしっかり捕まえるとけ?」

背中とベッドの間に腕を差し込み、引き寄せて起こしてやる。その視線よりも低い位置まで顔を下げ、見上げる形で教えてやる。俺を離さないでいられる方法を。

「俺を愛して。ずっと、俺だけ。そしたらどこにも行かない。ずっとお前の傍に居る。結婚だって何だってしてやるよ」

初めてセナの涙を見た。泣かない奴だと思っていたのに。


「ずっとマナだけ愛してます。ずっとずっと、マナはセナの一番です。だからセナの傍に居てください。死ぬまで、死んでもずっと」


ポタポタと涙を零しながら、綺麗に微笑む。

まだ幼いガキだと思っていたセナが、俺の中で女に変わった瞬間。
久しぶりによく眠れた夜。
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