COLORS~Clear~
私と霧島クンしかわからない。
2人が共有した。
今までとは全く違う、特別な瞬間…。

でも。

私はそれを、肯定するような態度をとるわけにはいかない。


私はお茶を点て終え。
いつものように、スッとそのお茶を差し出す。



「っ──」


ハッとした様子で。
差し出した茶碗に目をやる霧島クン。

その瞬間。
いつもの茶人としての表情(カオ)に戻って。
そのお茶を、口にした。

やはり。
こういう所はさすがに違う。
途切れていただろう、集中力が、一瞬にしてそのお茶に注がれるのが分かって。


「もう一度…」
「えっ?」
「もう一度、点ててもらえますか?」


眉をしかめ、茶碗を置いたと同時に。


「あ、はい…」


そのお茶をみつめたまま、彼が言った。

< 243 / 328 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop