甘い誓いのくちづけを
「し、式場だって……もう、予約してるんだよ……?」


何とか口にしたのは、文博を思い止まらせる為の言葉。


お互いの両親への挨拶はまだだったけど、彼の希望で式場だけは押さえておいた。


それが、今の自分(アタシ)の救いになるかもしれないと考えたけど…


文博の決意が強い事も、本当はもうわかっている。


「それなら、キャンセル出来るだろ。キャンセル料はちゃんと払うから」


「お金の問題じゃ………」


冷静さを取り戻そうとしても、声が震えてしまう。


「お互いの両親にはまだ挨拶もしてなかったし、幸い招待状もまだ出してない……。式場だって予約しただけで、それ以外は別に何も決めてなかったんだから、何とでもなるだろ」


淡々と話す文博に、もう何も言えなかった。


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