甘い誓いのくちづけを
「正直、結婚を意識して付き合って来たからこそ瑠花にプロポーズしたけど、本当に瑠花とやって行けるのか不安だったんだ……。ほら、瑠花は俺の意見を聞いてくれないから」


まるで、あたしだけが悪いと言わんばかりの口調に、悲しみなんかよりも情けなさが込み上げて来る。


鼻の奥を刺すような鋭い痛みも、瞳の奥に溜まり始めた熱も、まるであたしを嘲笑うように責めた。


「それに比べて、彼女は俺の意見を聞き入れてくれるし、何よりも俺の事を一番に考えてくれるんだよ」


言い訳なんて聞きたくも無いのに、諦め始めた心が従順に耳を傾けさせる。


「だから、俺……いつの間にか彼女の方に気持ちが傾き始めて、今は彼女が一番大切なんだ」


再び俯いていたのは、せめてもの抵抗だったのかもしれない。


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