甘い誓いのくちづけを
心に広がるくすぐったさが、自然と頬を綻(ホコロ)ばせる。


「ごめんね、瑠花ちゃん」


テーブルに案内された後も口元が緩みそうになっていたあたしに、理人さんが苦笑を零した。


「……へ?」


心地好さに浸っていたせいで、何に対する謝罪なのか考えようとしても頭が働かない。


すると、理人さんは調理場にいる英二さんに視線を遣ってから、再びあたしを見つめた。


「英二が言った事、気にしないで。あいつ、いつもあんな感じなんだ」


「……でも、素敵な人だと思いますよ」


頼まれたからと言って休みの日にまで店を開けるなんて、きっと優しい人なのだろう。


何よりも、理人さんの事を大切にしているのだと思う。


そんな思いで零した言葉だったけど、彼は眉を寄せた。


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