甘い誓いのくちづけを
「こんな言い方、ずるいのはわかってる。でも……」


揺るぎないものを秘めたような力強い瞳が、ほんの微かに揺れる。


「俺を信じて欲しい。君を想う気持ちに、嘘は一つもないから」


いくら理人さんが相手でも、簡単に“信じる”なんて言葉は遣えない。


だって、彼の全てを知っている訳では無いあたしには、安易に決断をする勇気は無いから…。


だけど…


あたしが理人さんを想う気持ちだって、もう揺るぎないものだから…。


「いつか……」


静かな車内に、自分の声がゆっくりと落ちていく。


「いつか聞かせて下さいね、理人さんの事……」


理人さんの瞳を真っ直ぐ見つめながら微笑むと、彼はいつもの柔らかい笑みを浮かべた後で、ゆっくりと頷いた。


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