甘い誓いのくちづけを
あたしの心の中を察したのか、理人さんがフワリと微笑んだ。


「明日の朝は、ちゃんと会社まで送るから。ね?」


ニッコリと微笑む彼を、拒絶する術なんてわからない。


「何時に出社すればいいの?」


簡単に折れてしまった自分に呆れながらも、素直に口を開いた。


「明日は……お休みなんです」


「あれ?休日って、カレンダー通りって言ってなかった?」


「有休、取ったんです」


新年度が始まってすぐに、社員達は上司から有休を少しずつ取るようにと促されていたから、あたしも帰省に合わせて一日だけ取っていた。


ただ、たまたまとは言え、それがまるで理人さんの為に用意した時間みたいに思えて、何だか少しだけ気まずさを感じてしまった。


だけど…


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