甘い誓いのくちづけを
「そっか」


心底嬉しそうに笑った理人さんを前にして、抱いたばかりの気まずさが簡単に吹き飛んでしまう。


「だったら尚更、問題ないよね」


楽しげな声が、車内の空気を揺らした。


「あのっ……!せめて荷物を……」


再びハンドルを握った理人さんに何とか切り出すと、彼は眉を寄せて笑いながら小さく頷いた。


「そうだね。じゃあ、ここで待ってるから、泊まれるように準備して来てくれる?」


「はい……」


あたしは戸惑っていたのが嘘みたいに素直に頷いて、すぐに車から降りた。


すっかり暗くなった空から降っていた雨は、いつの間にか止んでいて…


雨上がり独特の湿り気と匂いが、ずっと甘い熱を帯びていた体をそっと包んだ。


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