甘い誓いのくちづけを
部屋に入るとすぐに、一泊分の荷物が収まるバッグに必要な物を詰めていった。


急いでいるのは気持ちが逸る訳じゃなくて、理人さんを待たせている事が申し訳ないから…。


正直、あたしとしてはまだ心の準備が出来ていないから、叶う事なら最低でも数日分の猶予(ユウヨ)くらいは欲しい。


だけど…


きっともう、覚悟を決めるしか無い。


それを理解している頭が、逃げ腰な心を留めてくれる。


「平常心よ、瑠花……」


声が少しだけ震えていた事には気付かない振りをして、鏡に映る自分の顔を見つめながらゆっくりと深呼吸をした。


そして…


さゆりと買いに行ったあの下着を忍ばせたバッグを待って、緊張を隠しながら理人さんが待つ車に向かった――…。


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