甘い誓いのくちづけを
顔を上げてすぐに、目を大きく見開いてしまった。


「理人さん!?」


黒い傘を差して立っている理人さんに、ただただ驚く。


待ち合わせ場所は、うちの会社の最寄駅のロータリーだったはず。


「どうして……?待ち合わせって、確か……」


状況を把握出来ずに瞬きを繰り返しながらも言葉を紡ぐと、榊原課長があたしの背中をスッと押して…


「え……?」


気付いた時には、理人さんの傘の中にいた。


「荻原、お疲れ様」


「えっ!?あっ、はい……。あのっ、ありがとうございました!」


「あぁ」


榊原課長は無表情で頷いた後、ほんの少しだけ表情を和らげてから理人さんと会釈を交わし、人混みに紛れるように立ち去った。


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