甘い誓いのくちづけを
いつの間にか立ち上がっていたあたしは、理人さんを見下ろす形になっている。


肩でしていた呼吸を何とか整え、ゆっくりと唇を動かした。


「だから……もっとあたしを信じてくれても良かったのに……」


綺麗な表情を見つめながら、やっとの思いで胸の中に押し込めていた苦しみを吐き出した。


理人さんは眉をグッと寄せ、あたしの瞳を真っ直ぐ見つめている。


「うん、ごめん……」


「理人さんのバカ……。理人さんなんてハゲちゃえ……」


「それは酷いな」


子ども染みた悪口を呟いて、瞳に涙を溜めたまま真っ赤になっているであろう顔で睨めば、理人さんが申し訳なさそうにしながらも苦笑を零した。


その直後、腰にゆっくりと腕が回された。


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