ピュアなんです。
篠崎陵。
クラス一のデカ物。
椅子の背もたれに腕を乗せ、私達の話を聞いていた。
篠崎は椅子に座っているにも関わらず、身長の低い私は篠崎の目線と一緒。
「俺、人間観察好きなんだ。あっさんはずば抜けて面白いよ」
「褒めてんの、貶してんの?」
「多分褒めてる」
「ちょっと陵!それって一種のストーカーだよ。私の棗を汚さないで」
「今の発言、あっさんの人権がないね」
そうだ。
最近みんなして私の人権破棄する。
ちなみに、美季と篠崎は幼なじみらしい。
そして、篠崎は基本的無頓着で顔は整っているのに会話をする女子は私と美季以外めったにいない。
篠崎曰わく、最近の女子は個性がなくて興味が湧かないとか。
失礼なやろーだ。
「美季、鯛焼き奢って」
「やだよ。なんでいきなり話が飛ぶの、陵は」
「なんとなく。バイトしてんだから金入るでしょ、陵くん金欠」
「自分も稼げばいいでしょ!いつも集らないで!」
生気の見られない目で篠崎は言う。
あんなふうに口喧嘩しつつも、あの二人とよく一緒に帰ってる。
「はいはい、もう帰ろ!」
こうやって、私が止めないといつまでも口喧嘩をする。
私の鈍い第6感は、おそらく、多分、美季は篠崎が好きなんだ。
多分ね。多分。
美季は多分気が付いてなくて、篠崎は意味不明だから分からないけど。
時々、私がこの二人の間にいるのが申し訳なくなる。
…多分ね!
帰り道、なんだかんだ言って篠崎が美季と私に鯛焼きを奢った。
そうだ、こいつ金持ちだった。
本当に訳分からんやつだと思った。