ピュアなんです。

「…いや、違います。ちょっと、コイツ見ててくれますか?すぐ戻るんで」
「…いいだろう」

待っててと一言言うと、誠哉は中に入って行った。
え、待ってくれよ。
丸山さんメッチャメチャ怖いんだけど!

「………」
「………」

うわお!
沈黙痛いよ!
浅川さん涙目だよ。

「…あの、お名前はなんですか?」

今ある勇気を振り絞って丸山さんに聞いてみた。
この人の沈黙怖い。
怒ってるみたい!

「…丸山和真だ…君は?」

言葉のキャッチボール成功!
お前になんか言わねえみたいなこと言われたら、絶対凹んでた。

「あ、浅川棗です!…誠哉のクラスメートです!」
「…そうか、クラスメートか…」

………キャッチボール終わった!
ああ、どうしよう!
丸山さんて内気なのか!
それでいいのか!

「…ここに来ると言うことは、誠哉の事情を知ってるのか」
「え?」
「誠哉がここにいる理由をしってるのか」

黙りこんだかと思えば、長文を話し出した丸山さん。
無表情だから何考えてるか分からない。
多分私が全く分からないことを考えてるに違いない。
例えば政治家についてとか。
明日の夕飯とか。
…そう考えると可愛く見えてきた。

「いえ、知りません」
「…気にならないのか」
「そりゃあ…なりますよ。でも誠哉が言わないので聞きません」
「………そうか」

ふっと笑われた。
笑顔が優しくてつられて笑った。
なーんだ優しいひとなんじゃん。

「呼んだかぁ?」

ひょこっと扉から豪さんが顔を出した。

「昨日はありがとうございます。これ、返しに来ました」
「ご苦労さん。…今日は入んないのか?」
「いや、お金ないしガキだし、こんな格好だし…ホスト興味ないのでいいです」
「ふぅん。話もダメか?1人の男として」

予想外なセリフ。
でも相手はホスト。
私は豪さんをちょっと睨んだ。

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