ピュアなんです。


いまにも言おうとしたその時、

「誠哉ーどうだー?」

扉が開いた。
出てきたのは第3ボタンまで開けた20代くらいの茶髪なお兄さん。
あれ、誠哉って?

「いま起きた!大丈夫そう」

中野が答える。
そうだ、こいつ下の名前誠哉だ。

「そうか。お嬢さん名前は?」
「…浅川棗です」
「いい名前だな、似合ってる」
「…どうも…」

あれ、いま背筋がぞわっとした気がする。
いまめちゃくちゃ痒いセリフを言われた気がする。

「兄貴、委員長には通じないんだよ、その手のこと」
「ざーんねん。美人だから落とそうかと思ったのに」
「やめてくれよ!いくら兄貴でも俺のお気に入りはあげねーよ!!しかも委員長は16だぞ?」
「へー16?18位に見えるよ棗ちゃん」
「な、棗ちゃんって」

初めて男にしたの名前で呼ばれた。
かなり戸惑う。
いつもはあっさんとか委員長とか浅川しかないからな…
私が目を反らすと"兄貴"と呼ばれた人は首を傾げる。

「…経験値は中学生か」
「…………」

違うとはっきり言えないのが悔しい。
どうせ耐性ないよ!!
臭い言葉とかはお世辞として処理するけど、突然馴れ馴れしくされれるのは苦手。

「へー意外。男慣れしてるかと思った!」
「してるかよ。こんな性格だし、モテ期の1回も来たことないしファーストキスも16年間保護してるよ。男友達慣れはしてるけどな」
「可愛らしい顔してんのにね~…俺気に入ったよ、棗ちゃんのこと」
「え、」

なんで!?
今の何処にお気に入り要素があった!?

「だめだって!俺のだから!」
「安心しろ、少なくともお前のじゃない。野生の浅川だ」
「委員長冷たい」
「…………」

中野をスルーして当たりを見回す。
…何かの控え室?
私が寝かされていたのは皮のソファー。
改めてみると高そうなものばかり。
それに気がついた中野が苦笑する。
< 5 / 20 >

この作品をシェア

pagetop