ピュアなんです。
「…実はね、ここホストクラブなんだよ」
「へ?」
なんでホストクラブ?
どうして中野がここに?
中野がホスト?
私ホストクラブなう?
目が点になる私。
たぶんマヌケな顔してる。
意味深く笑う"兄貴"さん。
どうしよう。
思わぬ場所に迷い込んだ。
私の思考回路も迷いこんだ。
「じ、じゃ美季は?まだ連絡してないけど!!」
「さっき委員長の携帯に電話きてたから勝手に出させてもらった。先帰るってさ」
「あ、そっか。ありがとう」
今の時間は10時。
遅くなるとは言ったけど、きっと母が心配する。
ましてや、ここがホストクラブならいることさえ悪い気がする。
というか悪い。
たとえわざとじゃなくてもだ。
「もうこんな時間だから帰るよ。助けてくれてありがとう、中野」
私が帰る準備をし始めると、中野が私のバッグを差し出してきた。
「送るよ。女一人でこの時間は危ないから。また絡まれると悪いし」
「いや、平気…」
「それじゃあ俺の車乗りな。高校生二人はあぶねぇ」
兄貴さんまで立ち上がって準備をし始める。
え、さすがにあなたは迷惑になるから止めたいんですけど。
「兄貴はダメじゃん。客がいるし」
「ガキ二人のがダメ。客も大事だけどお前らも大事」
「なら丸山さんに頼めば?」
「あほ。フロアのやつが足りない方が問題じゃねぇか。ほら、行くぞ」
「え!ちょ…」
兄貴さんは強引に私の腕を引き、裏の扉から外へ出る。
それに続いて中野。
階段で地下駐車場に出ると、すぐ目の前に黒いピッカピカな車があった。
車には全く疎い私ではあるけれど、これってもしや…
「ベンツだよ、兄貴の車」
「ひゃー、この車様がおベンツ様でございますか」
「初めてか?後ろ、乗れ」
乗れと言われましても、そのあまりに美しい光沢を目にすると触ることさえ申し訳なくなる。
し、指紋が付いてしまう!
戸惑ってることを察したのか、中野が先にドアを開いた。