ピュアなんです。


どうぞ?と笑うスーツ姿の中野はどこぞの英国紳士に見える。
明日になったら、実は夢落ちでした!なんてオチがないようにその様子をしっかり写メに抑えた。
失礼しますと一礼してから乗ると兄貴さんの香水の匂いがする。
このシートやわらけー!などと内心興奮するも騒げず、石のように固まっていると隣の中野がニヤニヤしながら頬を指で指してきた。

「な、何?」
「んー?今日は一段と面白いなって」

仕方ないだろ!
こんな訳の分からん、イッツ・ア・ストレンジ・ワールドに飛び込んだんだから可笑しくもなるわ!

「どこまで?」
「日向崎の映画館前くらいでお願いします」
「りょーかい」

ミラーに映る兄貴さんの目が色っぽくてちょっとドキッとした。
そのままずっと見ていると目があった。

「棗ちゃん、見惚れてた?」
「…目がカッコイいなと」
「素直だな。直球過ぎて俺が照れる」
「あの失礼ですが、お名前は?」
「言ってなかったな。中野豪だ富豪の豪」
「俺の兄貴だよ。年は24の独身。彼女ナシ。ホストクラブ夜稟のナンバーツー」
「いらんこと言うな誠哉」

豪さん。
8こも年上。
大人の余裕を見せつける中野のお兄さん。

「ふっ中野とは似ても似つかないな」
「うるさいなあ委員長!…てかさ、俺も兄貴も中野だから今度から誠哉って呼んでよ」
「……んまぁ…考えておく」
「えー」

口を尖らせる中野。
いやだって今まで、名字だったのを名前にかえるのって意外に勇気いるんだからな。
それにお兄さんは豪さんって呼ぶし。

「これから先、多分豪さんとは会う機会ないし」
「ん?会うだろ?俺が会いたいから」

おおう。
恐るべしホスト!
さらりと言いおった!
さ〇りとした梅酒よりもさらりだよ。
あれ、この前中野に「委員長と絡みたいから!」とか言われた気がする。
やっぱり兄弟って似るもんなのか?




< 7 / 20 >

この作品をシェア

pagetop