太陽には届かない
駆けていく良平を見送りながら、陽菜はもう、この気持ちに歯止めが利かない事を悟っていた。
遠距離中の泰之。
良平の彼女。
年下で、非の打ち所が無いルックスを持つ良平。
決して美人でも可愛くもなく、自信のない自分。
陽菜は、自分が単純である事をほかの誰よりも理解していた。
それでも、疑惑が胸にこみ上げてくる。
少なくともさっきの良平は、自分にドキドキしていると言った。
それは…好きという事とは違うのだろうか?それとも、こんな自分を好きだと思ってくれているのだろうか。
でも、付き合うという言葉は一言も出てこなかった。
良平も迷っているのだろうか。
陽菜が良平の気持ちを量りかねているように、良平も陽菜の気持ちを量りかねているのだろうか。
陽菜は頭をフル回転させながら、フレンチトーストを口に押し込む。
そしてそのうち、良平を思う気持ちで胸が締め付けられ、食欲を失った。
2枚目のトーストにナイフを入れられないまま、店を後する。
昼休みが終わっても、退勤の時刻を迎えても、陽菜の心は此処にあらずといった状態だった。