触れないキス
その瞬間、バクバクと踊る心臓はほんの一瞬その動きを止めた。

ついでに、私の中の時間もぴたりと止まる。


目の前にいた人は、柚くんの面影を感じさせる

あの美男子だったから──。


私の姿を認めた彼も、驚いたように目を開く。

……ほんの一瞬だったんだと思う。

でも、初めて彼を見た時のようにぶつかった視線と視線は、長い時間絡み合っているような気がした。


間近で見れば見るたび似てると思う。

卵みたいにすべすべでキレイな肌は相変わらずだけれど、輪郭はシャープになって顔立ちも端正だけど男らしくて……

柚くんが大人になったらこうなるんだろうなって、まさにそんな感じ。


「──あ、の……」


ずっと見つめ合ったまま、気が付いたら勝手に声が出ていた。


「私、瑛菜……。あなたは……?」


あなたは、柚くんなの──?


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