やっぱり、好きだ。

 「すみません。おじゃまします」

 込み上げる嬉しさを、ぶり返しそうな恋心を『青山くんには彼女がいるんだよ。そもそも私は嫌いになられても好かれる事なんて何があってもないんだよ』と言い聞かせ、葬る。私の冷静な部分、頑張れ。

 「全然おじゃまじゃないですよ」

 青山くんが助手席側のドアを閉め、運転席に回った。シートに座り、エンジンをかけハンドルを握る青山くん。

 「あ。ちょっと待ってください。安田もこの近くに住んでるはずなので乗せってってあげましょうよ」

 アクセルを踏もうとしていた青山くんを止め、ポケットからスマホを取り出し安田のアドレスを探っていると、

 「はぁ?? 何で??」

 青山くんが、スマホの画面をタッチしていた私の人差指を握り、中断させた。

 「え・・・。だから、安田のアパートもこの辺なので・・・」

 「新人が車通勤なんて100年早いわ」

 安田を乗せるのが嫌なのか、青山くんが車を走らせてしまった。

 「私も歳はいってますけど新人ですよ??」

 ここに、安田も乗っていて欲しかった。かつて好きだった人の車に乗るのは、変に無駄な昂揚感が湧き立ってしまうから。

 「サヤ子はいいの」

  青山くんの基準がさっぱり分からない。元クラスメイトのよしみだろうか。

 しかし、運転する青山くんの横顔はやっぱりかっこいい。ほらね、無駄にときめく。桜井先生が羨ましい。
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