やっぱり、好きだ。
「なんで言ってくれなかったの?? 心配したんだよ?? 物凄く。あの時『辛くない』って言ってたけど、やっぱり違ったんだなって」
森田がサヤ子の両手をぎゅうっと握った。
「逃げたかったんだ。暫くいなくなれば、みんな、私がストーカーだった事忘れてくれるかなーって・・・。ズルイよね。でも、希望通りになったみたいだね。私、こんなんだから、かかってくる電話もないだろうと思って、ケータイ日本に置いて行ってて・・・」
泣きそうな顔で笑うサヤ子。
そんなサヤ子の笑顔に胸がきゅうっとした。
つーか、パソコンのアドレス聞いとけば良かったな。
「とか言ってサヤちゃん、本当はおみやげ買いたくなかったから言わなかったんじゃないの??」
痛々しく笑うサヤ子に、森田が冗談を言いながら優しく笑い返した。
「森田くん・・・チョコ好き??」
そんな森田に、遠慮がちに尋ねるサヤ子。
「うん。くれるの??」
「あのね・・・。親に『友達いない娘』って思われたくなくて・・・見栄張って、大量におみやげ品のお菓子買っちゃたの。・・・もしだったら、森田くんのまわりの方に配ってもらえたら・・・。青山くんも迷惑じゃなかったら・・・貰ってくれたら嬉しい」
サヤ子が、バツが悪そうに俯いた。
気を遣ってくれたのかもしれないが、サヤ子が俺にもおみやげをくれると言ってくれた事が、素直に嬉しかった。
「俺、全部食うし」
笑顔で答える森田に、
「俺も」
と便乗すると、サヤ子は少し驚いて、にっこり笑った。
「明日、お昼休みにココに来れる?? おみやげ持ってくるから。2人共、向こうのお菓子の甘さと大きさナメすぎ。全部食べたら顔ブッツブツになるよ」
サヤ子が楽しそうにニヤニヤ笑った。
「あ。じゃあ、サヤちゃん連絡先交換しよ」
ポケットに手を突っ込み、携帯を取り出そうとする森田に、
「大丈夫だよ。絶対来るから。私、もう行かないと」
と、サヤ子は森田に番号を教える事なく俺らから離れて行った。