君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。
この風が吹く場所が、私に触れた風が、夜くんに触れる場所が、南極じゃなければどこだって構わない。
だけどせめて日本が良い。
あんまり遠くは、だって寂しいじゃない。

あぁ、だけど…、同じ空の下ならやっぱりどこだって良かった。
彼が確かに生きていると、思えるならば、もうどこだって良い。

いつかこの命が終わるその日には、必ず彼の名前を思い出すだろうと思った。
そうやって最後には必ず、二人の過去を取り戻すのよ。

どれだけ離れていても、きっと大丈夫。
そう思ってさえいれば、すぐに夜くんに辿り着けるから。

そしてどうか、この世界で最期に鼓動するその日には、もう一度だけ、愛を伝えたい。
私は夜くんを愛していたと、彼に教えたい。
夜くんの愛は、私に届いていたんだと、安心させてあげたかった。
< 135 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop