君が居た世界が、この世で一番愛した世界だったから。
この世、この世界での赤い糸を握り締めて、私は夜くんを待ち続けている。
その糸を辿って、必ず帰ってくると、信じている。
そしてもう一度、「愛している」と囁く彼に、今度こそ私がちゃんと応えられるように。
夜くんが私に与えてくれた時間を、信じて私は待ち続ける。

だってね、夜くん。
私、気付いちゃったんだよ。
あの白くて四角い封筒には、切手の上に消印が無かったんだ。
あの日、扉の向こうに居たのは、夜くんだったんだよね。

ツメが甘いよ。それともわざとだったのかな?
あんなに近くにいたのに、家の中で怯えていたなんて、馬鹿みたい。
夜くんは本当に、意地悪な人だね。
今はまだ、ただいまも言ってくれないなんて…。
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