家元の花嫁【加筆修正中】


助手席に座る彼女は、かなり動揺していた。


まぁ、そりゃあそうだよな。

実際、有無を言わせず連れ出してるんだから、

これって、拉致したのと同じだよな?


しかも、何て話しかけたらいいのか分からなかった。



車に女を乗せるのは初めてじゃない。

自慢じゃねぇけど、女には不自由してない。


だが、隣に彼女が乗っているかと思うと

凄いドキドキして、心臓が飛び出すかと思った。



本人を目の前にしたら、言おうと思ってた事が全然出て来なくて。

むしろ、態度は強引だし、口調は悪くなる一方で。



不安だらけの彼女に優しくしたいのに、

俺は優しい言葉一つかけてやれなかった。




はあぁぁ~~、こんなの俺じゃねぇ!!

いつもの俺はどうした?!

培ったスキルはどこ行った?!



俺は―――――どうしようもなく狼狽していた。


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