黒縁メガネ男子に恋してる

「あぁ、縁結びの神様ね」


「はい。その石持神社には、ちょっと変わった恋愛成就の願掛けがあるそうですが、それって、どういうものなんですか?」


「あたしは知らないわねー。
徳井(とくい)さん知ってる?」


キツネ顔のおばあさんが、丸顔のおばあさんに聞くと。


「ええ。
石持神社さんにある、3つの石を、目を閉じたまま、右のお皿から左のお皿にこぼさずに移せたら、恋の願いがかなうんですよ」


「へぇ、そうなんですね」


智哉は、すかさずメモを取る。


「あらぁ、そうなの、知らなかったわー。
あたしゃ、下町生まれで、こっちに嫁いでくるまでは浅草だったからねー。
徳井さんは、生まれもこのあたりですもんねー」


キツネ顔のおばあさんは、聞いてもいないのに、しきりに言い訳している。


でも、嫁いでくるまでは下町って……、嫁いできてからの方が、人生長いんじゃ……。

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