記憶が思い出に変わる時(仮)





「ん…」

「落ち着いた?」

「…うん」



それでも
あたしを抱きしめる手を
緩めようとしない日向に
あたしは
期待せずにはいられない。


「あ、の…離しー…」



「…しぃが…死んだら…」


突然、日向が発した声は
あまりにも弱々しくて

「しぃが…死んだら…俺は…」

震えていて。



またあたしは泣きそうになった。



「椎名ちゃんね、
お父さんのこと大好きだって、
言ってたよ?」


「…しぃが?」

「きっと、日向に嫌われないように
必死なんだと思う…


椎名ちゃんのことも
自分たちのことも、

未来なんてわからないでしょ?


…椎名ちゃんはきっと
日向が幸せであることを、
大好きな人たちが幸せであることを、
祈ってるんだよ…」



ね、陽希。


あたし強くなったかな?


きっとあたしが陽希なら
全力で貴方の幸せを願うから。


だから、
あたしも貴方の幸せを願う。



弱いとこ見せる日向。

あたしが椎名ちゃんを
知っているから、
日向の苦しみをわかるから、


あたしだけには
嘘はつかないでほしいと
心から思ったんだ。






「ね、日向。
原宿、行きたい」


無愛想な貴方は
ふって笑ってこう言うんだ。

「…行くか」

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