鏡【一話完結型】
「仲良かったんだよ、本当に。
高校行ったって、四人で遊んで。
だけど……、三年前の夏休みに四人で行った旅行先で…」
その先の答えを、鏡の主は風子から聞かずともわかっていた。
だけど、口を挟む事なく風子の言葉をただ黙ってじっと聞いている。
ただ単に、悲しそうな風子に興味があったのかもしれない。
感情などわからない鏡の主だからこそ。
「―――――事故で、信人が亡くなってしまったの」
そう。
鏡の主はわかっていた。
全ての結末を。
どういう経緯で亡くなってしまうのかを。
ただ、それを伝える義理など鏡の主にはない。
もしも、四人が早くに仲違いをしていたら新藤信人と名乗った人間が死ぬことはなかった。
高校に進学する時に疎遠にでもなっていたら、また未来は変わっていたのだ。
だけど、それを伝えようがきっと彼等は仲良くするだろう。
そう、鏡の主は思ったのだ。
「……信人、私達の目の前で、事故に遭ってしまって」
その声は嗚咽で途切れ途切れだった。
涙が堰を切ったかの様に風子から溢れ出す。
鏡の主はただそれを見つめた。