罪語りて所在の月を見る
気づけば、だった。
自分のしたことが他人事のよう。雑巾を顔面キャッチしたAを見て、「あ」と何よりも驚いたのは渉だった。
「雑巾合戦だー、てりゃっ」
呆然と空の手を見る渉の後ろから、雑巾を投げる阿行で我に返る。
しかしながら、我に返ったことで尚更、先ほどのことを第三者視点で見てしまう。
それだけあり得なかった。
――僕が、怒った?
怒りなんて持ち合わせてはいけない、恨めば返り咲く、殺意を持てばアレが動いてしまって、現にあの人は僕のせいで――
「てめえやりやがったなあぁ!」
「きゃー、怒ったー」
雑巾合戦に相応しく、Aもまたぶつけられた雑巾二枚を投げ返す。ただ渉には当たらず、脇を通り過ぎるように軌道がずれて、廊下を虚しく滑るだけだった。