罪語りて所在の月を見る
渉の体にぴったりな阿行に当たりもせず、当たらなかった雑巾に「ファーっ」と言う阿行に、Aはがなるが――この状況に渉は安心していた。
何も起こっていない。
Aは健在で相変わらず喧嘩腰のままだし、阿行も先の言葉を真に受けていないのか、からかうように口を出している。
――なんだ、僕が勝手に焦っただけか。
心内で嘆息しながら平静を取り戻す渉。
「いいですよ、殴って。殴れるものならば」
そうして、さあと無防備をアピールした渉に、ABCはこめかみをピクピク動かしていた。怒り爆発と言ったところか――ああ、そうしてくれと渉には願ったりの展開。
何があっても自分は傷つかない。数回殴れば、無駄と分かり、勝手に引いてくれるだろう。