再会~初恋のやり直し~
「あたしはさあ、あんたと市原が関係持ったって聞いてちょっとうれしかったんだ。あんたが人の道から少し外れたことをして何か感じたらって思った。幸い、市原は独身だし。問題なのは、あんたの家だ。子供もいるしな。」

私は目を伏せた。恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。浅野さんは話を続けた。

「子供がいるとどうなのかって、よくわからないけどさ。あ、うちは子供ができなかったからさ。友達とこに子供が出来るたびに子供ほしーなーって思ったけど、出来なかった。うちの人とは何度も何度も話し合った。そして私達は2人で人生を生きると決めたんだ。そう決めるまでどれだけ時間がかかったか。無駄にお互いを傷つけあったか。でもそれを乗り越えて今があるわけで、それを乗り越えたら子供の頃私が市原を好きだったことも、山崎があなたを好きだったこともすっごいちっちゃいことでさあ、それがあったからこそ今の幸せがあるんだって思えるんだよね。」

浅野さんは遠い目をしながら、だけどなつかしそうに話していた。そして続けた。

「子供って幸せの象徴みたいなもんじゃん。愛も言ってたけど子供を私に授けてくれた旦那を愛してるって。でも、あいつはそれを市原に伝えることなく死んじゃったんだ。でも私は子供だけが幸せの象徴だとは思わないんだ。そりゃあ、子供の存在は大きいけど夫婦の幸せはまた別に築かれてるんじゃないかな~って。いろいろな出来事を2人で乗り越えることによって。だから、愛もきっと、例え子供がいなかったとしても市原を愛していただろうし幸せだったと思うんだ。」

そんな、ものなのかな~?私はどうなんだろう?私は心の中で自分に問いかけてみた。

「市原には私からそういうこと何度言ってもうまく伝わらないんだよね。やっぱ愛が自分で言わなきゃダメだったのかな。市原もかなり悩んでると思う。今回の市原の行動はその現われなのかな?とも思ってさ。」

かすみは少し心配そうに私を見つめ、そう言った。

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