三毛猫レクイエム。
エピローグ

三毛猫の、鎮魂歌

 よく晴れた休日。ちょうどあきの月命日ということもあって、私とヒロは、ヨシを連れて墓参りに行った。

 あの日、一人であきのお墓に行ったときは、どんよりと暗く、悲しい気持ちでいっぱいだった。だけど今日は、いろいろ起こったおかげで、あきに笑顔を見せることができた。

「あき、私、ちゃんと笑えるようになったよ」

 ずっと私のことを気にかけてくれていたあき。
 私の愛しい人。

「あきの言うとおり、ちゃんと前を向いていくから。安心してね」

 あきのことは、忘れないから。
 一生、忘れないから。

「タキ、真子のことは、俺に任せて」

 ヒロも、笑顔であきに報告してくれた。

「あき、また来るね」

 お花を飾って、私達はその場を後にした。



エピローグ 三毛猫の、鎮魂歌



 抵抗力の落ちている白血病の患者にとっては、ただの風邪の細菌も命取りになるのだと、頭ではわかっていたし、私も消毒をしたり、細心の注意を払っていた。

 それなのに肺炎になってしまったあきは、生死をさまようほどの高熱で意識を失って、数日が経った。
 医者に、覚悟してくださいといわれたときには、病院にいたにもかかわらず泣き崩れてしまった。

 あき、死なないで。
 お願い。

 そんな願いも虚しく、あきの身体はどんどん弱っていった。
 おばさんと明菜ちゃんは、毎日のように病院に訪れたし、私もずっと病院にいた。

「先生! 滝沢さんの意識が戻りましたっ」

 そんな看護師の声を聴いた瞬間、私はあきの元へ駆け寄った。病室が慌しくなる中、私はあきに話しかける。

「あきっ……」

 呼吸が荒く、苦しそうなあきは、確かに目を開いていた。
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