三毛猫レクイエム。
「真子」
「うん?」
「大事な話があるんだけど」
首をかしげる私に、タキの頬が少しだけ赤く染まる。
「あー、あんまこういうこと言わないから、ちょっと恥ずかしいんだけれども」
「?」
少しずつ、私の鼓動が早くなる。なんとなくだけど、タキの言いたいことがわかったような気がしたから。
私の高まる期待が、タキの言葉の続きを急かす。
「……俺、真子が良かったら、ずっと一緒にいたいって思うんだ」
そして、その言葉を聞いた瞬間、心に火がついたかのように熱くなった。
「真子のさ、笑顔がすっごい可愛くて……俺が笑顔にしてあげたいなーと」
照れたように言うタキに、私は顔を真っ赤にした。タキははにかんだように微笑んで、
「俺の隣でさ、真子だけは俺のこと、あきって呼んでくれない?」
「あき?」
「そう」
私が知る限り、タキのことをあきと呼んでいる人はいない。
「姫木真子さん、俺と付き合ってくれる?」
「……うんっ」
その日から、私はタキのことを、ただ一人あきと呼ぶ存在になった。
ヒロの告白に、私は硬直していた。動揺して、何も言えない。
そんな私を気遣うように、ヒロがそっと微笑む。
「困らせて、ごめん。でも、真子さんの気持ちはわかってるんだ」
「ヒロ……」
「タキのことを忘れられないことも、タキのことだけを考えてることも、ちゃんとわかってる。だけど、真子さんがタキに囚われてるような気がしてならない」
私は、はっとしてヒロを見た。
「言ったよな、俺、タキの親友だったって。少なくとも俺はそう思ってるって」
私は頷いた。するとヒロは、ポケットから何か紙切れを取り出した。
「これ、読んでみて」
「?」
綺麗に折りたたまれた紙を開いて、私ははっとした。
それは、とても見慣れた筆跡で書かれた歌詞だった。