三毛猫レクイエム。

「俺らのバンド、“Cat‘s Tail”っていうんだ。俺がヴォーカルで、テツがドラム」

 この低く痺れるような声で歌ったら、きっと私の心は一気につかまれる。今でも、耳に届く声だけで痺れきっているのだから。

「絶対今度、チェックします」

 私の言葉に、タキが笑った。その笑顔が印象的で、私は見惚れてしまう。と、テツがにやりと笑った。

「あっれ、タキ、真子ちゃんのこと気に入っただろ」
「えっ」
「うん?」

 テツの言葉に、タキは済まし顔で彼を見た。しかしテツはにやにや笑っている。

「堅物のタキも、男だったんだな」
「俺が男じゃなかったらいったい何なんだよ」

 そう言って、タキは私に向かってウィンクを投げた。

 細められた深い緑の視線に、見つめられたい。そんな衝動に駆られていた私の心は、そのときからあきに奪われていたのかもしれない。



 みゃあっ

「きゃっ」

 回想にふけっていた私は、突然ひざの上に乗ってきたヨシに驚いて現実に戻ってきた。

 みゃあ

 膝の上から私を見上げて、満足げな顔をするヨシ。

「何、わがままだね」

 のどのところをなでてやると、ヨシは嬉しそうにのどを鳴らした。
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