エトセトラエトセトラ
「へえ。なに、山田詠美?」
「ちがう。マザーグース」
「ああ、童謡の」
「そう」
シンデレラの城をぺたぺたと塗る。
簡易に書かれたこの城は、とても人間が住めるものじゃない。それでも女の子たちはシンデレラに憧れ、いつか自分だけの王子様が迎えに来てくれると信じている。
「素敵な何か、ってなんだろうね」
「さあ」
「金平糖とかかな」
「それは素敵なものなのか?」
思わず手を止めて彼が私を訝しげに見る。
「金平糖、かわいいじゃん」
「いや……そうだけど」
何か言いたそうにしながらも、作業に戻る彼。
「他に何かあるの?」
「……夢、とかさあ」
「ああ、なるほど」
妙に納得してシンデレラの城を塗っていると、今度は彼が質問をした。