エトセトラエトセトラ



「へえ。なに、山田詠美?」

「ちがう。マザーグース」

「ああ、童謡の」

「そう」

シンデレラの城をぺたぺたと塗る。
簡易に書かれたこの城は、とても人間が住めるものじゃない。それでも女の子たちはシンデレラに憧れ、いつか自分だけの王子様が迎えに来てくれると信じている。


「素敵な何か、ってなんだろうね」

「さあ」

「金平糖とかかな」

「それは素敵なものなのか?」

思わず手を止めて彼が私を訝しげに見る。


「金平糖、かわいいじゃん」

「いや……そうだけど」

何か言いたそうにしながらも、作業に戻る彼。


「他に何かあるの?」

「……夢、とかさあ」

「ああ、なるほど」

妙に納得してシンデレラの城を塗っていると、今度は彼が質問をした。



< 12 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop