エトセトラエトセトラ
「お前も砂糖とかスパイスとかでできてんの?」
「ううん。私は桜の花びら」
当然のように答えると、彼は顔を上げて呆れた顔で呟いた。
「お前よく恥ずかしげもなくそういうこと言えるなあ」
「事実だからね」
「あっそ……」
呆れた様子で相槌を打つ彼にむっとして、ペンキを塗るハケを側にあった新聞紙の上にぽい、と置き、彼に近づいた。
「驚かないの? 桜の花びら100%だよ?」
顔をぐい、と近づけて迫ると、彼は目線だけを上げてちらりと私を見た。
「なに、退屈なの?」
「うん」
自信満々に答えると、彼はくすりと笑った。
前屈みだった体勢を戻して彼の隣にちょこんと座る。
「役者陣は順調かなあ」
誰もいない廊下に蝉の鳴き声が響き渡る。普段ひしめいている生徒たちの談笑の代わりと言わんばかりに。
「大丈夫だろ、うちのクラス演劇部多いし」
大道具班のこのやる気のなさとは異なって、役者たちは8月に入ったあたりから既に準備を進めているようだった。話によると、クラスメイトの一人の家に集まって毎日練習しているらしい。