エトセトラエトセトラ
連れてこられたのは、屋上に続く扉のすぐ前の踊り場。
陽がほとんど当たらないからか空気がひんやりと感じられる。
「ここならまだマシだろ」
ドアの隣に腰を下ろしながら、息を吐くようにして彼が言う。
「たしかにちょっと涼しいね」
彼の隣に腰を下ろす。壁に凭れるようにして座ると、コンクリートの無機質な冷たさが背中から伝わった。
セミの声が遠くなった気がする。あんなに鬱陶しかった鳴き声が、今はほどよいBGMだ。
ゆっくりと瞼を閉じる。床と壁のひんやりとした冷たさを噛み締めるように体を預けていると、彼が口を開く気配を感じた。
「なあ、一個訊いていい?」
ぱち…、瞼を開ける。
「なに?」
隣を向いて問えば、真剣な目をした彼と視線が絡んだ。
「なんでキスさせてくんないの?」
ぱちくり。
率直過ぎる問いに面食らいながらも、目を合わせたまま理由を述べる。
「……したくないから」
その答えに彼が眉根を寄せたのがわかった。
「付き合ってるのに?」