幼なじみじゃイヤなんだ。 Before
桜の背中に腕を回す。


そしてゆっくりギュッと抱きしめた。




華奢な小さいその体は、温かくて、柔らかくて、たまらなく愛おしかった。

だから、このまま言ってしまいたいと思った。




3年近く抱えていた思いを今、言ってしまおうと思った。

桜は俺に抱きついたまま、何も言わずじっとしている。



桜の吐息が首元に掛かる……




「俺、桜のこと……」


「…………スー、スー」


「え?」




吐息…………?

規則正しく動く胸元……。



「スーースーー」



えっ……寝息!?

こいつ……寝てやがる。




がっくり肩を落とした時、コンコンと扉をノックする音が聞こえた次の瞬間、バーン!と大きな音と共に、桜の部屋の扉が開いた。
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