永遠の愛
「帰る所ないって、どう言う事?家…あるでしょ?」
「あの家は私の家じゃない」
「え?」
「あの家は母と男の家」
「お母さんと、男の人?」
「そう、母が毎回連れてくんの。店の客の男を。だから帰る所なんてないの」
そう語る天野さんの瞳は死んだような目で、まるで過去の私でも見てるんじゃないかって思った。
水商売をしているお母さん。
稼いだお金は自分の物に使っているって聞いた事があった。
でもだからってここに一人でおいて帰る訳にもいかない。
「私と一緒に帰ろう」
「いいよ。センセーに迷惑掛けるから。私、そう言うの嫌いだから。偽善者ぶらないでよ」
「ふってるつもりないから」
「ここに居たら誰かは拾ってくれる。そうしたらホテルで泊まれるから」
淡々とそう言った天野さんは開き直った様に微笑んだ。
「それは…ダメだよ」
「何で?センセーには害ないでしょ?それにお金も貰えるから好都合なの」
「でもそれは辞めよう。迷惑なんか掛んないから、とりあえず一緒に帰ろう。…ね?」
俯く天野さんを私は覗き込む。
だけど、天野さんは数分経っても一向に口を開ける事はなく、そんな天野さんの手を私はそっと握った。
…冷たい。
悴みそうなくらい冷たい手。
“お金も貰えるから好都合なの”
そう言った天野さんの気持ちが凄く分かってしまった自分にちょっとだけ嫌気がさした。
“帰ろう”そう言ったのは担任だからじゃなくて、人として。
私に手を引かれながら歩く天野さんは唇を噛みしめたまま俯いてた。