永遠の愛

“帰ろう”…と言ったものの帰る場所はマンションしかない。

自分の家に連れて帰ろうと思ったけど、慌てて出て来てしまった私は鍵すら持ってなくて。

一旦翔のマンションに帰るしかなかった。


マンションに帰ってからまた出ればいい。


「あー…あれ?つか翔さんの…」


不意に聞こえた声に思わず振り返ってしまった。

振り返ったのは“翔”って名前を言われたから振り返った訳で、決して声を掛けられたからじゃない。


振り向いた先に見たのはスーツを小奇麗に着込んだ男。

髪を無造作に遊ばせて、タバコを咥えたままジッと見て来たから思わず足を止めた。


「あ、やっぱそう。…美咲ちゃん?」


誰ですか?って言う前にその人は私の名前を呼び、思わず私は目を見開く。


…ってか誰?

店の前に居るって事はどうみたってホスト。

だけど、知らない。


「あ、えー…っと…」


つかんでいた天野さんの腕を離し、私は声を濁らす。

そんな天野さんも不思議そうな顔で私達を見てた。


「あー…俺、彩斗っつーんだけど。ほら、お母さんの葬儀の時に見てたから」

「あ、ごめんなさい…」

「いや、あの時は挨拶してなかったし」

「あー…っと、母の時はすみません。色々手伝ってもらったりして有り難うございました」


数人来ていた事は知っていたが、はっきり言って顔なんて覚えてなかったし、あの時はそれどころじゃなかったってのが確か。

身寄りもなく精神的に参ってた私の手伝いをほぼ、諒ちゃんと翔の友達が助けてくれた。

頭を下げる私に、


「頭下げなくていいよ」


そう言った彩斗さんの声にスッと上げた。
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