嘘つきヴァンパイア様


「…あ」

しまった。と、思った。


頬から冷や汗が流れ落ちた時にはすでに遅く、さらに重い空気が部屋中に流れる。


その空気をなんとかしようとレシィの顔を見ると歪められていた顔が元に戻っていた。


「そのようなことより、本日より涼子様は呉羽様の花嫁です」

「あ…は、はぁ」


「気の抜けた返事でございますね」


「だって、いまいち実感がないんです」


呉羽の恋人だと言う事実をようやく実感したのにまさか正体が神様など想像もしていない。


派手なこの部屋も外の景色も変わった呉羽の姿。


信じようと思えば無理にでも信じられることも、恋人だと信じた時のように実感がないと、何もいえないのが事実。


けれども、記憶をなくした自分を受け入れてくれた呉羽を信じたいと言う思いが強く、ごくりと息を飲み込みレシィを見た。


「あの」


「はい。涼子様」


「その、実感はないけれど…頑張ろうって思ってるよ。だから、よろしくお願いします」


頭を下げる仕草にレシィはやはり無表情のまま頷く。

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