嘘つきヴァンパイア様
それなのに、呉羽はクスリと笑みをこぼした。
「な…それ、笑うところ?」
「いや。悪い。けど、大丈夫だって」
「やだ…そんなの。だって、痛いんでしょ?」
「痛くない。前にしたんだから…な?」
耳元で囁かれ、身体の爪先から頭のてっぺんまで、ゾクリと何かが走った。
(そんなこと、されたら…私…)
「いい…よ……しても」
「え?」
こんなにも早く同意を得られると思っていなかったのだろう。
一瞬、呉羽は制止すると、直ぐに涼子を抱き上げた。
「…あ」
脚が地から離れ、涼子は呉羽を見上げた。
少し潤んだ瞳をいやらしいと感じ、逃げるように視線を反らす。迷いはない。あるのは緊張だけ。
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