嘘つきヴァンパイア様


(誰かいる…)

そう瞬時に思うと伸びてきた手が涼子の左耳をかすめ、窓に添えられた。

「…あ」

「なにを真剣に見てるんだよ」

背中に温もりを感じると同時に聞こえる声。声の主は呉羽だ。



昨夜、さんざん耳元で囁かれたせいか、呉羽の声を聞くだけで涼子の体温が上がっていく。


実は朝、涼子が起きたとき、呉羽は隣にいなかった。



それが彼女は少し寂しかったが、いざ会うと、なぜだ羞恥心が込み上げて来る。

お陰で、涼子の顔はもうすでに熟した果実のよう。

そんな涼子の反応を察したのだろう。わざとらしく呉羽が窓に付いている手とは反対の手で顎を掴み耳元で囁く。

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