嘘つきヴァンパイア様


一段、一段と階段を少し緊張しながら全て降りると、広いエントランスホールに出た。


殺風景というか、特別何もないエントランス。

今までの内装からして、大きな絵画か彫刻や石像、モニュメントなど想像していたが、それは涼子の期待を裏切った。


あるのは、大きなドア。外に繋がるドアだろう。


出る気など、全くないが、好奇心から涼子はドアに近づく。


すると、両脇にはくすんだ緑色のローブに、赤い紐のリボンを首に巻き付けている石像があった。手には身長を容易くこす鋭い槍。


(…なんだ、石像…あるだ)


石像にしては、リアル過ぎて、まるで人間をそのまま固めたような石像。


それにくわえ、槍をもつ姿は門番のよう。


珍しい石像を横目でみながらドアに近づけば、不意に図太い声がした。


「庭に出られるのでしょうか。花嫁様」

「…え?」


ピクリと身体は動かず、石像の口元が動いたことに、涼子は驚き身体が止まった。




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