嘘つきヴァンパイア様



***


『…カトレア…カトレア?』


(…え……?)

『君は、この真っ白な薔薇のように美しい。汚れなき白さは、キミの心のようだ』


(また…だ。また、この名前で呼ばれている)


ここ数日、見ることのなかった……いつもの夢。優しい声で涼子をカトレアと呼ぶ男性の声。


涼子がいつも見る未来でない、よくわからない夢だ。

(どうして…私を、カトレアと呼ぶの?私の名前はカトレアではない。どうして、切なそうに呼ぶの?)


『あなたは、だれなの?』


夢の中、涼子はその声に答えるように問う。

すると、その声は一瞬だけ聞こえなくなった。


『…あれ』


『カトレア…君は、私を忘れてしまったのか?このわたしを』

(え?ま、待って…)


夢のなか、必死に手を伸ばすも、その声は次第に遠くなっていく。

姿など見えないのに、それがひどく、寂しいと感じる。



『待って…』


『カトレア…きみはもう、カトレアではないのか…』

『…待って、よ』


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