嘘つきヴァンパイア様
「はい、これ」
「…え?」
背後から聞こえてきた少し低い声。けれどスッと耳の奥に入っていくような優しい音程に引かれるように振り向くとそこには一人の男性の姿があった。
「…あっ」
一目惚れとはこう言う事を言うのだろうか。その姿が瞳に映し出された瞬間、胸が何故か高鳴った。
生まれてこの方、初めて会った人にこのような胸の高鳴りを感じたことはない。それなのに、その姿に涼子は見惚れてしまう。
濁りのないブラウンの瞳。肩まで伸びた癖のある真っ黒い髪の毛。
切れ長の目に、筋の通った鼻。唇は少し薄いもの美しい桜色をして口元にある黒子が艶やかに見える。
日本人とは思えないほど手足は長く、バランスの良い体格。
次元が違う。その辺のイケメンだと言われている芸能人よりその男性は格が違う。綺麗って言葉が似合う、そんな人。
思わずその異質な男性に涼子は言葉を失い唖然と身体を固まらせていれば、男は首を傾げた。
「あの…」
鼓膜を揺らす声にハッと我にかえる。すると男は整った顔を崩し苦笑いを浮かべながら何かを差し出す。
「はい、バック」
「…バッ…ク?」
男の手には先ほど涼子が投げたバックがある。目の前に差し出され、手を伸ばしそれを受け取った。
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