嘘つきヴァンパイア様




「レシィ、やっと彼女を見つけた俺に労いの言葉でも言えばいいものを」


「…ご希望でしたら、いくつか見繕っておきます」


レシィと呼ばれた女性はそう言うとクルリと後ろをむき、駅の中だと言うのに手に持っていた真っ黒い日傘をさす。



「では、呉羽様。わたくしはお先に冥界に帰界致します。ルカとユノ様にはわたくしからこの事をご報告させて頂きますゆえ…ご安心くださいまし」


「あぁ…そう。わかった。俺も彼女を連れて直に帰る」


男にレシィは頭を下げ、人ごみに姿を消していく。レシィを見送ると男は再び、涼子がいなくなった方をしばし眺める。そして数秒後そのまま何もいわず、姿を消したのであった。




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